固定資産税に影響する個人事業主の減価償却について

個人事業主になり希望あふれる開業当時には、ついつい、新しいパソコンを事業用に買ったり、高額な商品を買ってしまうことが良くあります。

青色申告では、10万円以上の商品なら法定耐用年数に応じた年数で経費を分散することができます。

減価償却という制度は非常に良い制度で、売り上げが徐々に伸びていく事業において経費を分散できるため助かります。

特に制作期間が3ヶ月や6ヶ月から1年を超える仕事に必要な機材を購入したとき、制作途中で納品がまだなのに、初年度に一括で経費として扱われてしまうと、売り上げがないから赤字になってしまいます。

赤字も繰り越せるので良いですが、それは特例であって、売り上げに対して経費にならないと、気持ちが悪くなります。

ということで、僕は、定額法での減価償却を好んで使っています。

法人企業企業経営者の間では、使わなくなった金型などの減価償却資産を持たないようにと、よく話題に上がります。

なぜ捨てる必要があるのか、使えるなら使うまで保管しておけば良いのにと、あまりピンとこなかったのですが、減価償却資産には、1.4%の固定資産税が課税されるのです。

ガックリです。倉庫管理費以外にも固定資産税がかかってくるため、早く処分しましょうという流れになっていたようです。

個人事業主には関係ないと思っていたら、なんと、1月1日時点で150万円以上の減価償却資産がある場合は、固定資産税の、課税対象になるのです。

ががーん。

はい、法人の場合は、市町村から漏れなく、固定資産税の案内と共に賠償資産報告書が届き気付くのですが、個人事業主には、届きません。

今回は、個人事業主にとっての、固定資産税について書いています。

目次

個人事業主が関係する固定資産税

減価償却の前に固定資産について書かれているので不思議に思われたかと思います。

実は、個人事業主であっても、事業資産に対して、固定資産税がかかります。

1月1日時点で事務所がある市町村に、1月1日時点で所有する減価償却資産に対して、固定資産税が課税されます。

免除規定もあり、青色申告決算書に添付する「減価償却の計算書」の未償却残高の額が、150万円未満の場合は固定資産税の課税が免除されます。

未償却残高の額が、150万円以上の金額に対しては、「賠償資産報告書」の提出義務が発生します。提出していないことが発覚すると罰則金が発生します。

市町村は届いた、賠償資産報告書に基づき、納税通知書を作成し、1.4%の固定資産税が課税金額について納税通知書を送付します。固定資産税は年4回の分割納付です。

減価償却とはどういう仕組み?

減価償却の基本は、支払った取得金額を一度に経費として計上せず、法定耐用年数の期間を使い、経費に振り替えて償却していく仕組みです。

わかりにくいですね。税金の徴収さえなければ、必要がない計算方法に見え、お金を払った時点で、戻ってこないのだから、経費とした方が良いとは思います。

この減価償却という仕組みは、鉄道事業など最初に線路の敷設をして営業運転で利益を出していく事業に対する、投資効果を見える化するために登場しました。

鉄道事業では初年度の初期投資が大きく、その後は利益が大きくなり、その利益にかかった投入資金が見えなります。

そこで、鉄道敷設にかかった費用を、車両が走り始めてから線路の保守交換時期まで償却という形で経費として使い、その経費を次の保守交換まで貯めていく。という、仕組みからできています。(諸説あります)

税金は利益に対して徴収されるため、投資の回収ができてない段階で課税は無茶振りだということで導入されている側面もあります。

減価償却の計算方法

計算の前に、税法上の法定耐用年数と計算方法の2つを紹介し、その後実例を紹介します。一番正確な情報は、「国税庁 No.2100 減価償却のあらまし」に記載されています。

法定耐用年数とは

まず、製品や使用状況によって、耐用年数は大きく変わります。

税を徴収する立場から見るとそれぞれの状況に応じて、耐用年数を判断するよりも、耐用年数が決まっていた方が便利です。

そこで生まれたのが、税法上の耐用年数(法定耐用年数)です。

税務署に提出する決算書では、製品毎に税法上で決められた法定耐用年数を元に計算します。

国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表PDF」から確認できます。

計算方法は定額法と定率法の2つ

基本的に取得金額を耐用年数で分散する所は同じですが、毎年の減価償却の金額は、定率法と、定額法の2種類があります。

定率法は、初年度が一番多く徐々に減っていく計算方法です。定額法は、毎年同じ金額を償却していきます。

減価償却資産ごとに定額法と定率法を変えることはできません。

個人事業主の場合は、定率法で計算するには税務署への承認が必要です(逆に法人の場合は定額法への変更で承認が必要)。

お勧めは、定額法

基本的に僕は、初年度が一番償却額が大きく徐々に減っていく定率法よりも、減価償却は定額法をお勧めします。

もちろん、固定資産税の面から行くと定率法の方が未償却額が早く減るメリットがあります。

定額法を奨める理由は簡単で、わかりやすいからです。

定額法なら手計算で計算ができます。購入時点で帳簿に記入する際、領収書などに毎月の原価償却額をメモしています。

1年分の減価償却費予定額を12ヶ月で割り、毎月処理した方が経営判断が的確になります。

特例による一括償却もありますが。。。管理会計をする上でも減価償却で毎年経費にした上で、利益に対する経費を分けていった方が、見やすいと思います。

そういう事を考えると、事業継続という意味でも、定額法でサックリ、投入資金に対する回収計画をたてるのが、僕は好きです(ついつい最新型を買ってしまい、できていませんが)。

償却額を月次で処理するメリット

投資した資産に対する利益がより見える化して意識できるように、年の期末に一気に減価償却費を会計処理するより、毎月処理した方が経営判断が的確になります。

やり方は、1年間の予定原価償却額を計算し12ヶ月で割り毎月処理をして、年末に予定原価償却額と償却率で求めた額の差を補正調節処理をします。

これは、管理会計と税務会計を連動させるやり方では、より、経営資源の流れが見える形になります。

ちょっと、経営資源とか難しく書きましたが、要は、個人事業をしていると、使ったお金を忘れて、真剣さが薄れがちを防止する効果を期待しています。

例えば、このパソコンは原価償却によって1ヶ月8千円の経費を使っていると言うことがより鮮明に会計ソフト上で見えるようになります。

1ヶ月8千円ですよ、なんとしても売り上げを作って利益を出すぞと真剣に働く方向に働く気になりませんか?これが、管理会計的な会計の強さです。

書きながら思いましたがより投入資金の回収をブーストするなら定率法で減価償却をする方がメリットが大きいと、今気付きました。経営が軌道にのってから、定率法への変更を税務署に届けるのもありです。

計算方法

税法上の計算では「1 ÷ 耐用年数」が賠償率なのですが、四捨五入などの下桁処理よって変わるため、国税庁の減価償却資産の償却率等表PDFに書かれた、賠償率を使います。

耐用年数の最後の年の減価償却は1円の資産価値を残します。つまり、耐用年数を超えて利用している資産の価値は1円になります。

定額法

減価償却費 = 取得金額 × 定額法償却率

定額法(初年度)

減価償却費 = 取得金額 × 定額法償却率 × 使用月分 ÷ 12ヶ月

定率法

減価償却費 = (取得金額 − 既償却額 ) × 定率法償却率

減価償却費が定率保証率で計算した償却額より小さくなった場合は、定率法償却率ではなく改定保証率を利用します。

定率法(初年度)

減価償却費 = 取得金額 × 定額法償却率 × 使用月分 ÷ 12ヶ月

耐用年数定額法償却率定率法償却率改定保証率定率保証率
20.5001.000
30.3340.6671.0000.11089
40.2500.5001.0000.12499
50.2000.4000.5000.10800
60.1670.3330.3340.09911
70.1430.2860.3340.08680
国税庁資料より作成:平成24年4月1日以後取得200%定率法

個人事業主の視点

さて、飲食業など店舗用の家具などは金額も大きく払うしかありませんが、個人事業主としては、なるべく固定資産税は払いたくないと思います。

と言うことで、年間いくらまでなら使えるか?という視点で調べてみました。

一年間使える金額の例

あまり参考になりませんが、執筆やデザイン業務などを行う個人事業主のケースです。

減価償却対象耐用年数参考価格月間償却費年間償却費
MacBookAir422万円4,583円55,000円
iPhone416万円3,333円40,000円
デジタル一眼カメラ527万円5,625円67,500円
MacBookPro438万円7,992円95,000円
買切り版ソフトウェア(一式)513万円2,167円26,000円
合計116万円283,500円

10万円以下は減価償却の対象外となるため150万円までまだまだ余裕があります。

パソコンの耐用年数が4年となり、初年度に一斉にそろえた場合、1月購入で200万円から12月購入なら153万円までの投資なら、固定資産税が150万円未満になります。

設備増強は計画的に

4年耐用対象なら取得金額が総額150万円の製品を12月に利用開始すると、翌年度は年間37万5千円ずつ減っていきます。1月開始の200万円なら年額50万円ずつ減ります。

なにか、あまり意味がない、計算です。

ただ、ついつい、余裕が出てくると新型をポンポン買ってしまうこともあるので、その時に意識できるような例を提示しています。

パソコンやソフトウェアのアップグレードライセンスなどは、11月のブラックフライデーセールやクリスマスセールが一段と安くなります。

減価資産の償却は、取得日時ではなく、利用開始日時から始まります。

故障による緊急購入ではどうしようもありませんが、「国税庁 No.5400-2 事業の用に供した日」にあるとおり、設備更新などで安く購入して貯蔵品として計上しておく事もできます。

固定資産税に関わる減価償却と直接のつながりはないですが、高額だけどいつかは欲しいと割引率に惹かれて購入してしまった海外の高額ソフトを、後から使うための貯蔵品科目については、また今度書いてみます。


貯蔵品科目の記事ができてないので、とりあえず一時的に書いておくと、事業継続性がある個人事業主が青色申告の条件である複式簿記を利用することで、事業利用目的で購入した商品を、年度を超えて経費として計上するのに役立つのが、貯蔵品科目です。

貯蔵品は所得金額とは期末の棚卸資産と同様、その年の損益計算書の所得金額に反映されません。そのかわり、棚卸しにより、購入時期と金額が帳簿に記録されます。

この、帳簿上の記録が残っていることで、3年前に購入した製品も利用開始と同時に経費として計上することが可能になります。超便利です。

凄そうに感じて買ったけど使わずに新しいバージョンが出てしまって無駄になる事も多くあります。都度購入の当座買いの原則からみるとNGですが、こいつを使って新しく稼ぐぞ!!と思うことは良くあるので、悩ましいところです。

高額な設備投資には固定資産税が関係してきます。ホントに償却できる???絶対必要?と、貯蔵品科目があるからと安易な無駄遣いをしないためのストッパーとしても「固定資産税に影響する個人事業主の減価償却について」は一読の価値があるかも。。。しれません。

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